クロウ・クルワッハ Crom Cruach  

アオイシロの最終ボス、クロウクルウはケルト神話のクロウ・クルワッハがモチーフか?
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「彼らは忌まわしくも掌を打ち、体を突いた。
人間を奴隷にした怪物を歎き、涙が雨の様に降る。
立ち並ぶ12の石像、クロウの像は黄金に輝く」
『レンスターの書』より引用

1160年頃に成立したアイルランド語の古写本『レンスターの書』に含まれる『地誌(ディンハナクス)』には、人間最初の王と言われれるエリモン王の時代から、アイルランドのアルスター地方で崇拝されていたという神・クロウ・クルワッハ(書籍によって「クロム・クルアク」「クロウ・クル・アッハー」等の呼び方がある)についての言及がある。クルアクを「重なる」クロムを「輪」としてとらえ、とぐろを巻く蛇神であったと考える事もあるそうで、ケルト人達の間でも蛇は死と再生のシンボルでした。
クロウ・クルワッハについては『地誌』においてわずかに語られる程度なので、あまり多くの事が判っていないそうですが、その名前は「血まみれの三日月」「血まみれの頭」(書籍によっては「墓塚の曲がった者」「塚の三日月」)などと解釈され、蛇神、もしくは龍身の神だったのではないかと考えられています。その不吉な名前が示す通り、収穫と引き換えに長子の3分の1を生贄に要求する陰惨な神であり、ケルト神話を題材とする様々な作品に描かれているそうです。(アオイシロ作中で根方の長子を生贄にすると言う設定はこの辺から来ているのですかね?)

伝説のティアマス王の治世(紀元前16世紀)の時、アイルランドのカヴァン州マーグ・シュラフトにある<崇拝の野>で「神クロウの為に全ての長子と全ての血族の子孫が生贄にされた」とあります。大陸のケルト(ガリア)人に関してはカエサルの『ガリア戦記』等でケルト人が生贄の儀式を盛んに行っていた事が記されていますが、島のケルト人も生贄の儀式が行われていたらしく、1984年北イングランドのリンダウの泥炭地で人身御供の儀式の犠牲者と思われる1世紀頃の遺体「リンダウ・マン」が発見されました。頭蓋を細い斧で2,3回叩かれた後、縄で首を絞めつけられ、更に喉を切られた後、顔から泥炭の水たまりの中に押し倒された事が解ったらしく、こういった回りくどい死なせ方は人身御供の儀式である事を示唆しており、このリンダウ・マンの胃の中にはヤドリギの花粉の痕跡が認められ、人身御供の儀式にドルイドが関わっていた事を示すかもしれないです。つまり、クロウ・クルワッハはこうしたケルト人の人身御供の儀式と関わりがある神だったと想定出来ます。

なお、アイルランド人にキリスト教を広めた聖パトリック(390〜461頃)にはクロウ・クルワッハの神像を杖で打ち壊し、このような生贄の風習を改めさせたという伝説があるそうです。

本来、地方の祖先神、あるいは部族神であったと思われるクロウ・クルワッハですが、後世の創作では非常に強力な神として扱われています。
例えばクロウ・クルワッハにまつわるエピソードとして、第二次マートゥーレス戦争でバロールに召喚されヌアダの命を奪ったと言うものがよく知られていますが、これは『侵略の書』を元に“The Book of Conquests”や“The Silver arm”などの絵物語を著したアイルランド人アーティスト、ジム・フィッツパトリック(1959〜)の創作らしいです。

追記:民間信仰におけるクロム・ダウ(クロウクル・ワッハ)
ゴールウェイ州にあるマウミーンという山では、ルーナサーの祭り(ルーを讃える祭り)が長らく行われていた。クロム・ダウ(クロウクル・ワッハ)の日曜日と呼ばれる日に住民がこの山に登り、クロム・ダウ(”黒い異形の神”の意)に収穫を感謝し、引き続き豊穣を求め、その際には音楽や踊りを存分に楽しんだ他、山の両側の住民が棍棒を持って戦ったそうです。この祭りは聖パトリックがクロム・ダウを退治した偉業を讃える祭りになりますが、ルーナサーの祭りの日がしばしばクロム・ダウの日曜日と称されるのはルーとバロールの戦いがキリスト教化し、聖パトリックとクロム・ダウの戦いに置き換えられたからであるそうです。

クロム・ダウについては当初は反キリスト、悪魔とされていましたが、やがてダーラやダグザと混同され、聖パトリックに大釜や牡牛を捧げて改心したと考えられるようになりました。

追記:クトゥルフ神話との関連性
アオイシロのクロウクルウはクトゥルフ神話とも関係があるようです。クトゥルフはクルクルウなどとも表記され、南太平洋に沈む古代の都市ルイイエで仮死状態のような眠りについており、ときおりルイイエが地上近くに浮上することがあり、そのさい感受性が強い人間は精神に異常を受けて発狂したり自殺する場合があり、アオイシロではクロウクルウの破片である剣が人間の精神に影響を及ぼす事に似ています。海底の門の先にクロウクルウが居るのも古代都市ルイイエのオマージュなのかも知れません。


クロウクルウの餌が釣れた〜

関連項目

参考
『「ケルト神話」がわかる』 森瀬繚・静川龍宗[著] ソフトバンク文庫
『ケルト神話』 池上正太 新紀元社
『ミステリアス・ケルト 薄明りのヨーロッパ』 ジョン・ジャーキー 著/鶴岡真弓 訳 平凡社
『ケルト、神々の住む聖地 アイルランドの山々と自然』 へクター・マクドネル 著/山田美明 訳 創元社
『恐怖と狂気のクトゥルフ神話』 笠倉出版社

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